ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

私はと言うと……。
未だ、一向にドキドキが収まってくれない、遼さんに触れられた右胸を押え、気
持ちを落ち着かせようと努力していた。
まったく……。いきなり何をしてくれちゃうんだか。
まぁ、直に触られたわけでも、揉まれちゃったわけでもないんだから、そんなに
怒ることじゃないかもしれないけど……。
って、いやいや、ここは怒るとこだからっ!!
一人でブツブツ呟いていたら、空いていた右手をキュッと握られた。

「そろそろ出発するね。開店時間までには戻らないといけないし」

むぅっと唇を突き出し、納得いかない表情と気持ちで、握られた右手を見つめ
る。

「何? 手も繋いじゃダメ?」

「いいけど……」

「じゃあ、そんな顔しない。でも梓、まだドキドキしてるんだ」

「し、知らないっ!!」

また口を尖らせて窓の外を見る。
遼さんを意識しないようにしても、繋がれた手から熱が伝わってきて鼓動を乱し
てしまう。
敏感になっている手を指の腹でなぞられて、身体が勝手にピクンっと跳ねた。
たったそれだけのことで、なに反応してるのよ、私。
バレてないかと運転席をチラ見してみると……。
肩を小刻みに震わせて、笑いを堪えている彼がいた。

「遼さんっ!! からかうのもいい加減に……」

「ごめんっ!  そんな……つもりはない……んだけど」

言葉は途切れ途切れ、目からは涙まで流して笑ってるし……。
まるで好きな子にちょっかい出して笑ってる、小学生みたいだ。
うん? 好きな子?

……まさかね……




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