ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

運転中じゃなかったら、繋いでいる手の甲をキュッと捻ってやりたい気分。

「店にいる時の遼さんと、違う人みたいなんだけど」

「そう? だとしたら、梓が俺を変えてるんだよ」

「意味分かんないし……」

「梓って、結構キツイなぁ。もっと俺に優しくしてよ」

なんて言ってる顔は、やっぱり笑ってるし……。
でもその顔からは、楽しさが感じられるのは気のせい?
それに私も、なんか楽しい?
待ち合わせの頃に感じていた緊張がなくなっている気がする。
もしかして遼さん、それが分かっててわざとやってたとか?
なんとなく不思議な気持ちになって、知らず知らずに遼さんを見つめてしまって
いた。

「何? そんなに見つめられたら、顔に穴が開きそうなんだけど?」

「えっ? いや、その……。ごめん」

「ははっ、別に謝らなくても。そんな熱っぽい眼差しなら、いつでも大歓迎」

「熱っぽいって……」

カーオーディオからはアップテンポな曲が流れている。それに合わせてハミング
する遼さん。
私の身体も音に合わせて、自然と左右に動き出していた。
彼が楽しそうにしていると、こっちまで楽しくなる。
こんな感覚、久しぶりだ。
恋って、こんな気持ちから始まるんだったような……。

心の奥に仕舞いこみ忘れてしまっていた“恋心”が、少しづつ動き出していた。





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