ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

外に出ると、寒そうに身体を震わせた梓の肩を抱いてしまう。

「寒いからな。これで少しは暖かいだろ?」

何だかくさいセリフだが、俺も暖かいから良しとしよう。
ただ身体が触れ合っているからという理由だけじゃない体温の変化を、梓から感じる。俯き照れている感じが、たまらなく愛おしい。

梓を助手席に座れせ自分も車に乗り込むと、修さんが窓を叩く。
窓を開けると、顔を近づけてきた。

「遼、頑張れよっ。“アレ”使う日が早く来るといいな」

梓の前で、またその話かよ。それも声が大きいし……。
これは、もしすぐに梓とそういう日が来ても、修さんには内緒にしておいたほうが良さそうだ。何を言われるか、分かったもんじゃないっ。

ここに梓を連れて行くと決めたときは、修さんの反応が怖くて止めようかとも思ったが、そうしなくて良かった。こういう事は、早く伝えたほうがいい。
特に今回は迷っている時間もなかったし、修さんにはまた迷惑をかけることになるかもしれない……。
終始、嘘偽りのない笑顔を向けてくれた修さんに、俺はまた救われたようなきがする。

最後の最後までからかわれ、動揺する俺を見て大笑いする修さんに挨拶を済ませると、次の目的地へと車を走らせた。
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