ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

その後、当初の目的である仕事の打ち合わせを始める。
今日は来月に迫ってきた“クリスマスイベント”の為の料理についてだ。
毎年修さんと、美味しい物を一番いい形で提供できるように、お互いが意見を出し合っていた。一年で一番楽しい打ち合わせと言ってもいいかもしれない。
今回はいろいろ案を持ってきた甲斐もあって、修さんからも良い返事がもらえた。
仕入れに関しては全く心配していないし、いつも最小限の話でまとまる。
今日も、ものの15分程度で終わってしまった。


最近は修さんも忙しく、なかなか店に顔を出してくれない。
たまには飲みに来て欲しいと頼むと、来週飲みに来てくれることが決まった。
何とも充実した気分で帰り支度を始めると、その手伝いをしだした梓と手がぶつかる。

「あっ……ごめん」

彼女が身体をぴくっと反応させたあと、そう謝る。

「何で謝るかなぁ。今日は朝から何度も手、繋いでるのに」

まったく……。
でも今日の今日で慣れろっていうのも無理な話か。
梓の白く柔らかい手を、当たり前のように握り立ち上がる。
すぐに、脈の速さを感じた。
彼女がドキドキしているかと思うと、俺まで気持ちが高ぶる。そしてその興奮が、行動となって現れてしまった。

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