精神科に入院してきました。
不満なことって……
 私は少し可笑しくなった。


鍵をかけられて・知っている人が誰もいない中で・タオルもなくて・お風呂にも入れなくて・話し相手もいなくて・朝食には嫌いな牛乳がでる生活の中で、わざわざ「不満」を
聞かれても、逆に何も言いようがない。



 なにより、死のうとしたのは私で、入院同意書にサインしたのも私だ。


だから私は、彼に言ってもよさそうなこと、つまり
「お風呂って入れないのでしょうか?気がかりなんです。あと、着替えもほしいです」
と伝えた。


 心理士はうなずいて、この病院では月曜、水曜、金曜に入浴と決まっており、看護師が順番に呼びに来ると教えてくれた。
 それから、着替えはナースに言えばもらえるはずだ、とも。



 最後に彼は聞いた。
「今も死にたいですか?」



いいえ、と私は答えた。
「一回やったのでもうすっきりしました」





妙な答えだったかもしれないけれど、本音だった。
 そうだ。
私、一度自殺してみたかったんだ。


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