精神科に入院してきました。
すると、配膳車の音がして、
「あ、神崎さーん、ごはんとりにきてよー」
とヘルパーさんに呼ばれた。


 そうか、こうやって食事はやってきていたのか。
私は、そう、自分でできるのだもの、食事を配膳車まで取りに行き、ナースステーションの前にあるやかんからお茶を自分のコップに注いで、部屋に戻った。


 老人たちが部屋から出されて、ホールにつながれ始める。
食事の介護を一か所で済ませるため、だ。




玄米パン、ヨーグルト、リンゴジュースの朝食を済ませて、私はなくのに疲れて寝ようとした。
 すると今度は体温を測りにナースがやってくる。



ナースさんは、私の体温が36度7分だったのをみて、
「よかった!今日ね、神崎さん以外のひと、みんな37度5分やってん。私が仕事サボって適当に書いたみたいに見えたら嫌やなぁって思っててんよ」
と朗らかに笑った。


つられて私も、少しだけ笑った。




そのあと、昼食までよく寝た。

 中華丼とお酢の物、スープの昼食を済ませると、また憂鬱が襲ってきた。



だって部屋にいる以外することがない。
昼間はホールに車いすの女性がいる。

そして部屋にいてもすることがない。
窓を開けても竹林しか見えない。



……そうか。
私は皮肉なことを思いついて、一人で笑った。
 竹林しかない、静かな場所。
此処は「死」にもっとも近い場所だ。

高齢のお年寄りたち、私のように死にかけた者。


そのくせ、「死」から必死で引きはがそうとしている、気持ちの悪い病院だ。
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