雨降って、血固まる。
「何だ」



首を精一杯反らせて男に尋ねた。



「俺ト、来ルカ?」



男の声は、腹にずしりと響く重低音だった。



今まで生きてきて、これほどまでに何の感情も含まれていない声を聞いたことがなかった。



好意も、悪意も、何も伝わってこない。



声というよりは、限りなく単なる音に近い響きだ。
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