雨、ときどきセンセイ。
雨と混線


あ、雨……。


翌朝、玄関を出た時にぽつりと頬に雨粒が当たった。


傘、忘れないようにしなきゃ。


まださすほどではない雨だったから、私は折りたたみ傘をカバンに突っ込んでバス停へと向かった。

どんよりと曇った空は、ここ最近私の心とリンクしているようで。

晴れない気持ちの時にこんな天気になってる気がして溜め息が出た。


この曇った気分も、いつかは晴れて、変わるのかな。

それは私だけじゃなくて、先生もそうだといいな。


そんなことを思って学校へと向かう。


「梨乃!」
「あ、みっちゃん。おはよう」
「おはよ! って、それだけ!?」
「えー、うん。それだけ」
「……つまんない」


みっちゃんてば人ごとだと思って。

いや。違った。きっとあまり深刻にならないようにしてくれてるんだ。

だってやっぱり相手が相手だから、そんな簡単に話は進まないし、ましていい方向になんか……。


「最後まで、つまんないかもよ」


私がふふっと苦笑して言った。
すると、みっちゃんが私の腕に手を回してぐいっと距離を縮めて顔を近づける。


「梨乃。この時期、ありがたーい日があるでしょう?」
「“ありがたーい日”?」


私が怪訝そうな顔をしてみっちゃんを見ながら聞き返すと、みっちゃんは大袈裟に「もう!」とリアクションして顔を手で覆った。


「2月よ? 2月! と言えば、あれしかないでしょ!」
「2月……ああ!」


目力でみっちゃんに迫られて気付いた。
そうか。バレンタインという日があるんだ。

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