雨、ときどきセンセイ。
「起立」
センセイの声。
相変わらず、耳に残る声をしてるなぁ。
私は数学の時間が始まってすぐは、しばらくその余韻に浸る。
こんなに見てたらやりづらいだろうな。
そのくらい、センセイを目で追っていて。
しとしとと、今朝は大丈夫だった雨がちょうどセンセイの授業中に降り始めた。
雨の音が耳に心地いい。
けど、晴れの日より静かにも感じるのはなんでだろう。
そんな中、私は目で、耳で……横切る風すらも、肌で。
全神経をセンセイに集中させてしまう。
逃さない。
逃したくない。
センセイの全てを。
……だって、唯一堂々と観察できる時間と空間。
逃げることも逃げられることもない。
邪魔されることもない。
だから、一秒たりとも無駄にしないように。
そして、願わくば――センセイ。
私の視線に気づいてくれたなら。
そうしたら、きっと私はすぐに勘違いしてしまって、授業どころじゃなくなるだろう。
そして、そんなことをも、きっと“大人の”センセイはお見通しで。
だから……だから、こっちを見てくれることはない。
そう、思ったのに……。