雨、ときどきセンセイ。

「じゃあここの例題2から、このページの問を全部解いて」


センセイがそう教室内に言い渡して教科書を持っている手を少し下げた。

そしてゆっくり巡回するように歩いたセンセイは、教壇へ戻るとそこを通過して窓際にゆっくりと移動する。

窓の外を何気なく眺めた後、顔を上げて曇った空を見ているようだった。


そして、その視線が不意に私へと向けられる。


え……?


センセイと目が合っている間、周りからはカリカリとペンを走らせる音とノートを捲る音が聞こえるだけで。

そのセンセイの視線は偶然だ、と、思っていた私の予想に反してセンセイは全然目を逸らそうとしない。


さらに、私の記憶違いじゃなければ……。

その今、向けられているセンセイの眼差しは、先生じゃなくて。
昨日の続きかのような瞳で私を動けなくさせた。


雨のせいかもしれない。

そんなふうに錯覚させられたのかもしれない。


けど、こんなにも長く感じる程の時間を、その視線が私に向けられていること自体信じられなくて。


危うく、今が授業中ということを忘れて、席を立ってセンセイに近づいてしまうところだった。


そうなる前にセンセイが動いて、言い放つ。


「はい。じゃあ前に出て解いて。1問目、佐賀。2問目、秋野」


その通常の空気に戻った瞬間、私の脳に酸素が送り込まれた感覚がした。

ずっと、息を止めてたのかもしれない。


そんなことを感じながらセンセイの横顔を見ていた。


「吉井」


そのセンセイが急に私の名を上げた。
心で声を上げ、動揺している私に、センセイは何食わぬ顔して言った。


「3問目な」



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