雨、ときどきセンセイ。
私、吉井梨乃(よしいりの)高校三年。
そしてさっきのは私の担任でもある、数学教師、真山恭一(まやまきょういち)年齢26。
彼はすらりとした体型と、中性的な顔立ちで一般的には美形に属すると、私も認める。
性格もモテるからと言って“タラシ”でもなさそうで、そんな硬派(?)な中身も人気が出ている要因のひとつだと思う。
必要以上に笑わない。
馴れ馴れしくしない。
会話は常に業務的。
―――女の影も匂わせない。
そんなセンセイは、当然学校のアイドル的存在で。
まぁ女子が皆そうかと言われればそうでもないけど。
―――“昨日まで”の私みたいに興味ない人もいるからね。
「吉井ー」
頬杖をつきながら、真山センセイの書いた黒板の字を見て考え事をしてたら私の後ろから呼ぶ声が聞こえてきた。
「何、水越」
振り向くとノートとペンを持った水越翔(みずこししょう)が困った顔をして立っていた。
「さっきの最後の問いが……わかんねぇ」
「えー…?」
私は面倒な声を上げながら水越からノートを受け取った。