雨、ときどきセンセイ。

センセイは傘に視線を落とし、私に背を向けたまま言った。


「“特別”でもなんでもない」
「――え?」


一体なに?
急に何のことを話しているの?


思考がついていけないのは熱のせいだけじゃない。
センセイが本当に突拍子もないことを言ってるんだから。


「昨日の質問の答え」


……昨日の?
私、なんて言ったっけ?


「ついでに言うと、一晩がどうの、とかは身に覚えのない話だ」


そこまで聞いて思い出した。

香川先生のことだ!

散々昨日気にして、気にして。
それで体当たりで問い詰めたくせに、私の頭は一体どうなってんの。


自分で自分が情けない。

…でも、どうしてそんなことをわざわざ教えてくれるんだろう。
そんなことしたら、また逆戻りだって、センセイならわかりそうなものなのに。


「“なんで”って顔に書いてる。バレバレだ」


私がよそ見して考え事しているのを、いつの間にかセンセイは見ていたようで、そんな風に言い当てられた。


「…だって…」
「変な勘違いされたままで、授業に身が入らなくなられても困るしな」
「…自信過剰って言いませんか、それ…」


って言いつつ、あながち外れてもいない気はする。
現に昨日の連絡事項も聞いてなくて、今日の会議も知らなかったくらいだ。


「センセイ…」
「なに」
「また…音楽室に行ってもいい?」


センセイは帰り支度をしながら聞いていたけど、私がまたとんでもないことを聞いたせいか手を止めた。

そして少し考えて答えた。


「別に、俺が拒否することでも許可することでもない」

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