† of Pupil~瞳の魔力
だけど違った。

彼女は、僕が『目』どころか、そういった存在にすら気付かない世界を作ろうとしていた。

たぶん、これは彼女の話していたことからの推測に過ぎないのだけれど……

僕の知らないところで、彼女は彼女なりに悩んでいたんじゃないだろうか。

つらい思いを、したんじゃないだろうか。

それをまだなにも知らない僕に、悟らせなかった。

そして考えたんだろう。

知らないのなら、いっそ知らないままのほうが幸せだと。

だから幹は、僕が一二三さんと接触を繰り返すことを快く思わなかった。

足や腰を痺れさせてくる腹部の鈍痛。

それを押し殺して歩く度に、すごい量の汗がひたいや首から溢れてくる。

これは本当に、骨に異常があるかもしれない。

動かないのが一番の得策だとは思うけど、こんなところで、当事者のひとりである僕がのんびりなんてしていられない。
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