† of Pupil~瞳の魔力
教室を出て、階段へ向かう。

一二三さんと幹は屋上だ。

僕らの教室は三階だから、そんなに遠くはない。

校舎の両脇と中央に設けられている階段の、中央から登っていけば、屋上はすぐだ。

角を曲がり、視線をあげた僕の目に、

「賢一」

「……」

なぜ、ここにいるのかわからない人物が、いた。

「遅くなるの? 帰り」

と、いつものように、

「連絡しないの? 今日も」

彼女は、

「行くつもり? 屋上へ」

「……」

「ダメだよ、そんなこと」

倒置法で、そう言った。

ブラウスにロングスカート。制服ではない出で立ち。

背中でゆるくくくられた黒い髪に、どこか眠たげな眼差し。

「通してあげない、ここは」

日の光は地平線の向こうへと薄れていってしまったらしく、今や廊下も階段もほの暗いけれど……

僕がそれを見間違い、また聞き間違うことはない。

鈴原香澄姉さんが、そこにいた。
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