† of Pupil~瞳の魔力
悠然、立っている一二三さんの右腕に、炎が絡む。それが徐々に徐々に太くなっていく。

最大出力まで、持っていくつもりだろう。

ボクを、骨すら残さないよう。

(くそ……)

心中だけで、憎悪を叫んだ。

ほら、なんてことだろう。普通の人間なら、こんな最後にはならない。喧嘩したって、傷が残る程度。

だけどさ賢一、人外であるということは、こういうやり取りが当たり前だということだよ。

昔から頼りなかった賢一。君にこんな世界を味わわせたくなかった。

だって君じゃ、一瞬だって太刀打ちできない。できるなら、この存在すら知らせたくはなかったよ。

そして叶うなら……ボクの将来の夢は、六条賢一のお嫁さんになることだった。

朝からお味噌汁にご飯、それから塩鮭なんかを作ってて、平凡な……。

そう平凡な、恋人っていうのに、なってみたかった。

もっともたとえ人外でなくたって、幼馴染みとしてこんなにも付き合いの続いてしまった今じゃ、照れ臭くって言えないけれど。

絶対に、心の中だけに留めておくけれど。
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