すいそう

 目が覚めたのは自室のベッドの上だった。ぼんやりした頭の中で、あの子が消えた瞬間の鈍い音が鳴り響いている。あの後僕はどうしたんだ。あの子を助けにいったのか、助けを呼びにいったのか、それすらも思い出せない。意識がはっきりとしてくるにつれて先程までの鮮明な記憶が現実感を失っていく。あれは、夢だったんじゃないか。そう思った瞬間、全身の力が抜けていくのを感じ僕は再びベッドに倒れこんだ。涙腺まで緩んだのか、悲しくもないのに涙があふれてくる。胸が締め付けられるような感覚に軽い吐き気すらおぼえる。僕は朝からどうしてしまったというのか。何もする気が起きず、ただただ涙が流れるのを感じながら天井を見上げていた。力の入らない手で携帯を開く。ああ、今日が土曜日で本当によかった、そう思いながら僕はゆっくりと目を閉じた。
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