あなたは私の王子様。―Princess Juliet―
~プロローグ~

ジル――ジュリエットの
薄い金の髪は父譲り。瑠璃色の瞳は母譲り。

大好きな両親とジルは
緑色の四つの尖塔が佇む、
小さいけれど、たくさんの人々が働く
活気溢れた暖かい城館に住んでいた。

伯爵位を継いだばかりの父は
王宮の会議に出席し、
母は慈善事業に力を注いでいて、
二人とも多忙だったに違いないのに
ジルをとても愛してくれた。

二人がいなくても、
メイドや庭師達と一緒に城館を掃除したり、
花の種を蒔いたりする時間は幸せだった。

『いいかい、ジル』

宮殿に隣接するチェレニー大聖堂の鐘が
9回響く頃、
うとうととするジルに父は
いつも聞かせていることがあった。

『どんな時も笑顔でいなさい。
笑顔を与えられる人になるんだ。
僕らの可愛いお姫さま――ジュリエット』

その日は一年で一番寒い日だった。
仕事で宗教都市へ赴いた両親は
ジルを遺して、亡くなった。
馬が暴走し、二人が乗っていた馬車が
橋から落ちたのだ、とメイドから聞いた。

メイドや庭師達は、
昔なじみの何人かを残して城館から去った。
悲しみに暮れたジルは
8歳にして城館の主となった。

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