あなたは私の王子様。―Princess Juliet―

そこへ、付け入るようにやってきたのが
異国の貴族へ嫁いだ
亡き父の妹である叔母と、従妹だ。

『ジル。これから、よろしくね』

叔母リーシェと従妹ルクレティアは
さも当然であるかのように
城館へ住み着いた。

父が遺してくれた資金は、
叔母によって底をつく寸前まで使われた。

(お金を稼ぐためには、
どうしたら良いのかしら。)

それからのジルは、暇さえあれば
街へ繰り出しパンや花の売り子をし
裁縫を習って帽子を作ったり、
木の実からジャムを作る方法を学んだ。

叔母は「みっともない」と決して
良い顔はしなかったが、
自分達が生きて行くためには仕方ないと
わかっていたのだろう。
だんだんと文句を言うこともなくなった。
(それでも自分から働きはしなかったが。)

ジルは、あっという間に15歳になった。
社交界へデビューする年齢になっても、
ドレスを作るお金があるなら
内職をしていたほうがマシだ、と
義務づけられたパーティ以外は全て断り
城館へ引き込もって仕事に勤しんでいた。

片手で数える程しかいないメイド達に混じり
庭を整えたり、ドレスを繕ったり、と
忙しない毎日を過ごし、そうやって
季節が変わっていくことに
ジルはとても満足していた。

維持するだけでも費用がかかる城館を売って
どこか違う場所に住むことも考えたが、
両親の思い出が残る城館から去ることだけは
どうしても出来なかった。

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