『武士ドルが斬る!?』〈前編〉


 「…この辺りでは見かけぬ顔触れとお察ししますが…ほのかに“京の香”の 匂いがいたしました‥そちらから使わせた者とお察し致します。」


 諷馬の言葉に…濃姫は眉をしかめた。


 「やはり……。
 これは…うかうかしてはおられぬ状況ですわね。」


 厳しい顔つきで重い溜め息をもらした。



 「濃姫…。
 私の事は気になさいますな…。
 悔いが残らぬよう大事を遂げらせますよう願いまする。」


 「恐れながら…。」



 私の言葉を遮り…諷馬は言葉を続けた。


 「お舘方様より‥濃姫様のご心中の火種を消すよう我らに命じられ数名火消しに手配しました故ご安心下さりませ…。」


 片手を床につき敬意を払いながら一礼した諷馬は…にこりと微笑んで私と濃姫を見回した。


 「…ということは 結局…ここでの話は当に殿もご存知という事で相違ないか…?」


 私を直視した後…悪戯な笑みをみせ軽口を叩いた濃姫に諷馬も深く頷いたのを確認して3人で声を揃えて笑いあった。


 「では…肴…。
 私の心中の火種消ししかと…頼んだ。」


 ひとしきり和んだ所で…再び敬意を払い手を床につくと口角をを上げて一礼した。



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