『武士ドルが斬る!?』〈前編〉


 「…私からも…。」


 ただ黙ってその様子を見ていた濃くんが…トラックからおりて殿の横に並んだ。


 「兄は…器用な人間じゃありません…。
 良いと思った事なぜか裏目にでてしまう性分です…。

 だから…笑うのが苦手になってしまった。


 冷酷無比に装い続ける事は…容易い事ではありませぬ。


 兄には心の拠り所がありませんでした。

 殿も兄と似ているとこがあると…思っていましたが…ただ殿にはあって…兄にないもの…。
 殿は吉乃様という方に自分の心を明かせる拠り所があったからだと…私は殿と兄の2人をみてそう思いました…。


 散り散りになった一族の為…明智家再興の為…心を犠牲にしてきたのです…。


 だから…私からもお願いです。


 兄の心の拠り所になってあげて下さい…。


 弟として…お願い申し上げます。

 過ちを繰り返さない為に…。」



 濃君は…二人に深々と頭を下げた。



 ガラシャさんと忠興さんは…私達をグルリと眺めた。



 「親子水入らずで話せ…。

 今度謀反を起こす時は…光秀1人じゃなく3人で起こす程気持ちを通じあわせばいい…。」





< 569 / 649 >

この作品をシェア

pagetop