ふたり輝くとき
そんなことを考えながら時間を潰していた会議がようやく終わり、廊下を歩いているとふいに呼び止められた。

「ユベール」
「母上?」

振り返れば、アンナが無駄に装飾の多いドレスのスカートを揺らしながら近づいてきていた。視線で近くの部屋へと促され、周りに誰もいないことを確認してから入り込んだ。

その部屋にはすでに先客がいた。アドリーヌだ。彼女の隣にアンナが座り、ユベールは向かい側に座った。

「側室はいらないって言ったはずだけど?」

ユベールは先手を打った。

この勘違い女に割く時間があったら、つまらない執務でもしていた方がマシというものだ。

「でも、侍女たちが貴方はサラをお部屋に呼んでいないって噂しているわ。初夜のときもサラはすぐに自室に戻ったって。満足していないのでしょう?それなら――」

アンナが頬に手を当てて眉を下げている。

「噂は噂でしょ?」
「でも、サラに聞いてもなかなか教えてくれないし……」

ユベールは心の中で舌打ちした。

アンナは1度、サラにユベールとの子供を急かしてから何かとサラの部屋を訪れてはその後の“お遊び”について尋ねているようだった。

だが、そもそもユベールがサラを毎日抱いていたとして、彼女がそれをひけらかすような真似をするわけがない。

サラはこの欲深い女たちとは違うのだ。
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