ふたり輝くとき
呆然と店主とユベールのやりとりを見ていたサラの手を引いて、ユベールは店を出た。

サラはユベールに手を引かれるままについてくる。

ためらいなく高価なアクセサリーを買ったことで、少しショックを受けたのかもしれない。それに、店主の態度の変わりようにも。

「サラ?サラってば」
「は、はい!」

近くの公園までたどり着いてもまだボーっとしているサラにユベールが呼びかけると、サラはハッと顔を上げた。

「ねぇ、お腹空かない?あれ食べよう」

そう言って、公園の隅に出ている屋台を指差す。ここまで甘い匂いが漂ってくるそれは、クレープを売っているもの。

サラは少し迷ったようだったけれど、コクンと小さく頷いた。甘い物は好きらしい。

ユベールはそんなサラの様子に少し笑って、屋台へと近づいた。

「どれにする?」
「えっと……あの、苺がいいです」

サラの要望通り、苺のクレープを生クリームとカスタードいっぱいと付け足して注文した。店員からそれを受け取って、サラに渡すとじっとユベールを見つめてくる。

「あの、ユベール様は?」
「サラ、シーッ!」

ユベールは自分の唇に人差し指を当てた。いくら外見を変えていても、ここで“ユベール様”なんて聞かれてしまったら面倒なことになる。

< 12 / 273 >

この作品をシェア

pagetop