ふたり輝くとき
「サラ、着いたよ?」

サラの部屋に入ってソファに並んで座る。

「サラってば」
「あ……はい」

ユベールに肩を揺すられて、ようやくサラが声を発した。

「ねぇ、手出してごらん」
「手?」

サラはキョトンとしている。ユベールはクスッと笑い、サラの細い手を取った。そして、昼間に買った琥珀のブレスレットをつける。

「これ……」
「僕からのプレゼント。指輪は、ルミエールに代々伝わるものだったから僕からっていうのとはちょっと違うし」

ユベールはそっとサラの手を持ち上げて、琥珀の雫に口付けた。サラが微かに悲鳴を上げる。

「ふふっ、捕まえた」

冗談めかして言うと、サラは首をかしげる。意味がわからなかったようだ。

「ブレスレットって手錠みたいでしょ?」
「ユ、ユベール様……」

“手錠”という物騒な言葉に、怯えた色が映った青い瞳。ユベールはそれがおかしくて笑った。

「冗談だよ。それじゃ、僕はもう行くね。おやすみ、サラ」
「あ……おやすみ、なさい」

戸惑ったように言葉を返してくるサラの頭をそっと撫でてユベールは部屋を出た。

(冗談、じゃないけどね)

そう、自分は捕まえたのだ。哀れなうさぎを。いや、人形と言った方が正しいかもしれない。ユベールのシナリオ通りに動く人形。ようやく、その人形劇の幕が上がる。

「喜劇になるか、悲劇になるか……どっちだろうね?」

どっちでもいい。誰がどう解釈しようが結末は同じなのだから。

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