ふたり輝くとき
「アンナ、お前はユベールとサラの結婚を承諾した。ジャンの娘だと最初から知っておったのだろう!こんな女狐を城に入れおって!お前にも責任がある。それ以上喚くなら、お前もこの場で殺してやる!」

ダミアンが腰に携えていた剣を抜き、アンナに向かって投げつける。ガンッという音と共に、それはアンナのドレスの裾と床を縫いつけた。

アンナは真っ青になって、少し離れたサラからもはっきりわかるほどに身体を震わせている。

「そ、そんなっ!サラを気に入ってユベールの正室にと提案なさったのはダミアン様ではありませんかっ」
「なんだと!?」

アンナの言葉にダミアンが王座を下りてくる。

「そ、そうだわ!最初にこの縁談を持ちかけてきたのはジャンだわ!そうでしょう?ダミアン様」

震えてはいたけれど、最後は甘えた猫撫で声を出したアンナにダミアンはピタリと歩みを止めた。

「ジャン、出てこい」

低く紡がれた声に、部屋の空気が凍りつく。ジャンは震えながら大臣たちの控える列の後ろから姿を現した。

「お前、最初からこうするつもりだったのか?」
「ひっ――わ、私は、娘をロ、ロラン様にと、申し上げたはずです。ですが、ダミアン様が第一王子であるユベール様を最初に結婚させるのだと……っ」

ダミアンに鋭く睨みつけられ、ジャンは1歩足を後ろへ下げた。

「ロラン!ロランだわ!サラはロランと中庭で密会していました。2人で計画していたのよ!」

アンナの顔に笑みが戻る。突破口を見つけたかのように。

「俺はジュストの居場所なんて知らなかった。サラが城を抜け出す前は、ずっと父上と南地区の教育について話していたんだからアリバイがある。そうでしょ?」

そう言って、ロランが肩を竦めて見せる。
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