ふたり輝くとき
「クロヴィス、何でまた君がいるの?」
「おはようございます。ユベール様」

相変わらず質問には答える気がないようだ。あからさまに嫌な顔をしたユベールを見て、クロヴィスは眼鏡の位置を直して口を開いた。

「城もようやく落ち着いてきまして、整理したらお2人のお荷物も多々残っておりました故、お持ちしたのですよ」

そう言われて、部屋の隅に目をやるとたくさんの箱が積み上げられていた。

「別に、いらないって言ってるのに」

ユベールはため息をついてクロヴィスの向かいに座った。

この家にやってきてからすでに2ヶ月ほどが経った。城を出てすぐ、2人を追いかけてきたクロヴィスに案内されたのだ。

マーレの小さな村――といえるのかもよくわからないほど人がいないが――にあった家。それは、ヴィエント王妃が幼少を過ごした家らしい。

家具もすべて揃っていたし、少々古いけれどクロヴィスが事前に掃除や補修をしたらしく特に困ることもない。

いつの間に許可をとったのか……クロヴィスは2人のマーレ王国への移住手続きも、住む場所の手配もすべてを済ませていた。そして、こうしてたまに生活に必要なものを持ってくる。

城を出たユベールはもう王子ではない。身分だって今は平民と同じ、ユベールもサラもただの男と女。2人はどこにでもいるただの夫婦なのだ。

こんなことをしてもらう理由もないので一応断ってはいるものの、クロヴィスはやはり取り合うつもりがないらしいのでユベールはそれを“都合よく”利用させてもらっている。
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