ふたり輝くとき
「サラ!」
「あ、おはようございます。ちょうど朝食の用意が終わったんです。今、紅茶も淹れますね」

リビングに入ってきたユベールに微笑みかけると、ユベールはムスッとした顔でサラを見つめながらキッチンに向かってくる。

「もう!どうして先に起きちゃうの!」

どうやらサラがあの後、ユベールの腕が緩んだ隙に起きてきてしまったことを怒っているようだ。

「置いてかないでって言ったのに!」
「置いていくだなんて――っ」

ポットに伸ばした手を掴まれて、ぎゅうっと抱きしめられる。

「置いていった……サラはいつも僕を1人にする」

拗ねたように耳元で訴えるユベールは子供のようで。サラは少しくすぐったい気持ちになる。

「じゃあ、ユベール様も早起きしますか?」
「どうして?君がもっと寝てればいいじゃない」
「もう、それじゃいつまでも――んっ」

“起きられないじゃないですか”と、言う前に唇を塞がれた。顎を持ち上げられ、舌が絡んでくる。

「……僕はずっと君の隣にいたいのに、サラは違うの?」

唇が離れて、吐息混じりに囁かれる。サラは上目遣いでユベールを見た。
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