ふたり輝くとき
そのとき、ふわりと温かい何かが背中に掛けられた。

「こんなところで何をしているの?風邪引いちゃうよ?」

優しく響く声。振り返れば、ニッコリと笑顔を浮かべた男性がサラを見下ろしていた。サラに掛けてくれたのは上着らしく、少し薄着だ。

少し長めのこげ茶色の髪をひとつに結んでいて、瞳は髪と同じ色。

「俺のこと、わかる?」
「あ、あの……」

どこかで会ったことがあるのだろうか。

「ロラン、って言えばわかるかな?」
「――っ!」

サラは思わず身体を硬くした。

正妃イザベルの子――ユベールを殺したいと思っている人。

それを見て、ロランがクスッと笑う。外見はあまり似ていないけれど、笑い方はユベールに少し似ている。

「ジャンに話を聞いた?それとも、ユベールから教えてもらったのかな?」

サラはパッと視線を逸らしてしまった。

ああ、どうして自分はこんなにも嘘が苦手なのだろう。これでは、サラのせいでユベールに彼らの計画がバレてしまったと言っているようなものだ。

そんなサラを見てクスクスと笑いながら、ロランはサラの隣に座った。

「そんなに緊張しないで。サラ、って呼んでもいい?」
「は、はい……」

緊張する。先ほどとは違う胃の痛み。
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