ふたり輝くとき
階段を上がり、長い廊下を進んだ最奥の重厚な扉。

侍女がその扉を守る警備兵に耳打ちし、扉がゆっくりと開かれる。部屋の中から流れてくるのは、香水の匂いと、熱気のような……こもった空気。

侍女に促されてサラはそっと足を踏み入れた。

部屋の奥、ソファにどっしりと構えて座っているダミアンがサラの視界に映る。両側には服とは言い難い薄い布を纏った女性がダミアンに寄り添うように座っていて妖艶に微笑んでいる。その1人の胸元にダミアンの手が忍び込んでいるのも……サラにはしっかりと見えてしまった。

「ダミアン様、サラ様をお連れ致しました」

サラを案内してくれた侍女がソファから少し距離を置いた場所で立ち止まり、礼をする。サラもそれに倣って頭を下げた。

胃の中からこみ上げてきそうな何かを奥歯を噛み締めて我慢する。

「ご苦労、下がって良い。お前たちもまた夜に来なさい。サラ、よく来た」
「ご無沙汰しております」

ダミアンに絡みついていた女性2人と侍女が部屋を出て行き、サラはドレスのスカートを摘んでもう1度軽く頭を下げた。

「堅苦しい挨拶は良い。もっとこちらに来なさい」

サラは戸惑いながらも、2・3歩前に進んだ。それをダミアンがじっと見つめている。

ねっとりと絡みつく視線に、サラは汗がにじむのを感じた。

怖い――

それは、これから罪を問われるかもしれないということへの恐怖なのか、それとも……
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