ふたり輝くとき
「『ユベール様』だって!かーわいー!」
「でもユベール様はサラ様を寝室に呼んでないって侍女が言ってなかったか?」
「そうそう、政略結婚ってやつだろ?ユベール様の好みってもっと激しい感じじゃなかったっけ」

サラはまた胃が痛くなって手で押さえる。それは、日に日に鋭い痛みになっていくようで……サラは泣きそうになる。

「別に寝室じゃなくてもできんだろーが」
「サラ様もスタイルいいし。まだ18だろ?やべー」

サラを連れて来た青年がニヤニヤと笑ってサラの手を掴んだ。ゾッと鳥肌が立つ。

「や、やめてください。私、お父様に会いにきただけなんです」
「だから、それは後で――」
「サラ、ジャンの部屋はここじゃないよ」

その声に、兵たちのお喋りがピタリと止まる。先ほどの楽しい表情とは一転、こわばった顔をした兵たちが道を開けた。

「ロラン、様……」
「ユベールじゃなくて、ごめんね?でも、可愛いうさぎちゃんは1人でこんなところに来てはいけないよ」

ロランは靴を鳴らしながら歩いてくる。その優雅な動作には王子としての威厳がある。

「君たちは侍女で我慢してね。ユベールに兵舎ごと吹っ飛ばされたくはないだろう?」

そう言うと、ロランはサラの手を取って踵を返した。兵たちは何も言わず、息を潜めてそれを見ているだけだ。

「サラ、さすがに俺も焦った。ちょうど君が兵舎に入っていくのを見かけたから良かったけど」
「ごめんなさい、私……」

ロランはため息をついて、その後は何も言わずにサラの手を引いて歩いていった。

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