ふたり輝くとき
扉のたくさん並ぶ廊下を歩いていると、あちこちから好奇の視線が注がれてサラは居心地が悪かった。

第一王子の正室という立場はそんなに珍しいものだろうか……

歩みが止まって、顔を上げると1枚の扉の前に立っていた。なんだか先ほどより周りに人が多いように感じられて戸惑ったサラは思わず後ろへ1歩下がった。

「サラ様、お入りにならないのですか?」

トン、と背中がぶつかったのは先ほどの青年。サラを見下ろす瞳は、先日のダミアンと同じ“女を欲する目”をしていた。

「――っ」

気づいてしまえば、すぐに周りのことが把握できた。兵たちの視線はサラの身体を舐めるように注がれていて、その表情は卑しい笑み。薄っすらと開いていた目の前の扉の奥からは、女性のくぐもった声が漏れてくる。

「わ、私っ、お父様に――」
「ジャン元帥には後で会いに行きましょうよ。俺たち、サラ様のような可愛らしい女性とお話ししてみたかったんですよ」

廊下を引き返そうするけれど、集まってきていた兵たちに囲まれて抜け出せなくなってしまっていた。

「侍女も最近新しいのが入ってこなくてつまらなくて、なぁ?」
「あぁ、この前の2人もあんまりだったな」

以前クロヴィスに兵舎の担当に回された侍女たち。彼女たちの表情の意味を、サラはようやく理解した。

「ユ、ユベール様っ」

サラがユベールの名を呼ぶと、兵たちが笑う。
< 92 / 273 >

この作品をシェア

pagetop