君と、世界の果てで
「コンサートするの?」
コンサートって……ライブと言ってくれよ……
ツッコむのもあきらめ、うなずいておく。
「ああ。陸のバンドで、陸の代役」
「あらあら。お母さん、見に行こうかしら」
「やめとけよ……ロックなんか聞かないくせに……」
「あら。そんなことないわよ。
若い頃、お父さんの車で、よく聞いたわ。
久しぶりに、コンサートデートしようかしら」
やめろ、目をキラキラさせるな。
乙女な母親なんか見たくねぇ。
「他のバンドも出るから……退屈するぞ。やめとけ」
「何よ、つまんないわねぇ」
じゃあ行ってらっしゃい、と、背を向けた母親は、すごく小さく見えた。
元気に振る舞っていても、我が子を失ったダメージは、相当な物だっただろう。
「あ、ご飯いる?作っちゃった」
「……食べるから、冷蔵庫入れといてくれ」
「了解~」
何とか、日常に戻ろうとしてるのだ。
「迷惑、かけるかもしれねぇ……」
また、思った事が、口に出てしまった。
もう、迷惑かけたくないのに。