君と、世界の果てで
「お兄ちゃん!」
家に戻ると、母親が、青い顔をして駆け寄ってきた。
「なんだ?ゴキブリか?」
「違うわよ……あぁ、どうしよう、翼……」
名前を呼ばれるのなんて、久しぶりだ。
いつも、お兄ちゃんと呼ぶのに。
「どうした?落ち着けよ。親父!親父!」
リビングにいるはずの親父は、出てこない。
声は聞こえてるはずなのに。
ザワザワと、胸騒ぎがする。
「おい……」
「どうしよう、翼……」
「だから、何が?」
「警察から、電話があって……」
警察?
何で?
まるで、その先は話したくないと言うように、母親が崩れ落ちる。
「おい!」
すると、やっと、親父が現れて。
青い顔で、恐る恐る口を開いて、一言、呟いた。
「陸が……死んだ」