君と、世界の果てで


「これ、陸のだな」


あいつが昔、部屋に置いていた親父のお下がりだ。


「何か入ってますか?」


「待てよ……えっと……電源は……」


「電池じゃないですか?」


「そうか」



リモコンは見当たらない。


本体の電源を入れると、MDが入っているのがわかった。



「何を聞いてたんだか……」



単純に、陸の最後に聞いた音楽に興味が湧き、再生ボタンを押した。


何者かに先に殺されたなら、聞いてない事になるが。


少しの静寂のあと、人の話し声が混じった雑音が聞こえてきた。


本当に、ライブ音源を編集したもののようだ。


俺は耳をすます。


ドラムスティックのカウントが聞こえた。


その後流れた、無理矢理高音をかき鳴らすギター音に、耳が裂かれるかと思った。


ベースが、地面を割るようにうなる。


────これは……!



「わかりますか?誰の曲か」



無意識に指先が震える。


俺は、誰よりもこの曲を知っていた。



「……俺だ……」


「はい?」


「俺が、作った曲……俺が昔いたバンドの演奏だ」


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