君と、世界の果てで


陸。


その一言に、何故か胸が痛んだ。



「この香りが、守ってくれる気がして。

心細い時ほど、たくさんつけてしまうんです」



あぁ、この子は。


本当に陸を好いてくれていたんだ。


笑っているのに悲しげな表情が、それを物語っていた。


それなのに、アイツは死を選んだ。


この子はそれを目の当たりにさせられたのか……。



「……本当に、悪かったな……」


「大丈夫です。

今夜は、眠れるといいですね」



いや、さっきの事じゃ無いんだが。


気のきいたセリフ1つ知らない自分に、苛立った。



「ここで、大丈夫です」



深音に言われた通り、車を道の端に寄せた。



「あの……」


「え?あっ」



深音の戸惑ったような声で、初めて気づいた。


降りようとする彼女の手を、握っている自分の手があった。


それは全くの無意識で、自分でも少し驚く。



「あぁ……ほら、これ」



そんな驚きをかくすように、

俺は、ジャケットのポケットにしまったままだった、鍵を取り出した。


革のひもがついたそれを、握った手に押しつける。


深音は、きょとんとした顔で、俺を見上げた。


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