君と、世界の果てで
「悪かった……
眠れてなかったからだろうな……」
「わかります。
私も、眠れなくて。
昼間、陸のベッドで眠れましたけど」
深音は、少し微笑んだ。
倉庫での事は、何も言わない。
さっきの事といい。
なかなか、頭の良い女だと思った。
気づけば、もう部屋は真っ暗になっている。
俺は、遠慮する彼女を車で送る事にした。
「すみません」
「いや、俺のせいで遅くなっちまったから」
助手席で、ナビに住所を入力させる。
深い紅に染まった爪が、タッチパネルに当たるのが、何故か嫌ではなかった。
深音の家は、陸の家から車で20分くらいのところにあった。
それはともかく。
助手席から、やたらと甘ったるい香りがする。
それが、俺の脳をしびれさせる気がした。
「香水、好きなのか」
「あ、すみません。キツイですか」
「いや。悪かねぇけど」
「陸にもらった物なんです」