天国のマシュに会いたい
もうマシュと別れたくは、なかったのだった。

知佳からマシュを家の外に出さないでくれと言われていたので、マシュはずっと家の中で過ごしていた。
なので近所の人には我が家に、もう一匹猫が増えているのを知られていなかったのであるが、ある日のことである。

二軒隣のアパートに春から、日本に出稼ぎに来ている中国人一家が居て、その一人娘の小学生が、以前に声を掛けてから、たまに我が家を訪ねてきて庭で遊ぶようになっていた。しかし家の上には、あげたことが無かった。

一週間に何度か来ていたのだが、玄関のドアを開けて入ってきた時に偶然マシュを見つけた。

それは十月中旬頃であったのだが、それまでその子は、クロはよく外に出ているので知っていて、たまにクロを追いかけて遊んでいたりしていたのだが、ミルは外に出ることも、あまりなく、人見知りをして他人の前にでることが無かったので、遊んだ経験が無い。

初めてマシュを見かけて、その子が
「初めて見る猫や、何言う名前?」
と千恵子に訊ねた。

知佳はマシュは誰にでもついていくから、家から外へ出すなと言っていたが、一週間ぐらい前に千恵子を訪ねて来た友達には、ミルみたいに人見知りして逃げようとはしないのだが、触ろうとすると突然威嚇して触らせなかった。
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