結婚白書Ⅲ 【風花】



「お帰り 珍しいじゃないの」



父は素直に嬉しそうな顔をして私を迎えてくれたのに

久しぶりに顔を合わせた母は 娘にこんな言葉をくれた


就職してさっさと家を出た私を はじめの頃は何かと干渉したが

最近はかまってもくれない

娘より孫の方がいいものね



「だいちゃん 大きくなったでしょうね」



今年生まれた甥っ子の様子を聞くと 母は 

”和音ちゃんが送ってくれたのよ”と 写真を見せてくれた

兄貴が 赤ん坊をお風呂に入れている写真



「へぇ 意外にさまになってるじゃないの」


大きな手で子どもの耳をふさぎ 大事そうに子どもを抱えている

兄貴の顔は すっかり父親の顔になっていた 



「今度はいつ帰ってくるの? 会いたいわね」



生まれたときに会ったっきりの甥っ子にも会いたかったが

和音さんにも会いたかった

和音さんは義姉さんだけど 彼女には もっと近しい感情を持っている

女同士の話をしたいな……





翌日は 母の買い物に付き合って運転手



「アンタとこうして出かけるなんて 久しぶりね 

ところで 彼とはどうなってるの?」



やっぱりね そうくると思った



「別に……」


「別にって お付き合いしてるんでしょう 結婚の話とかしないの?

ウチの娘を何だと思ってるのかしら

脈がなさそうなら さっさと見切りをつけないさい いい? 

芙美子おばさんに いい人を見つけてもらうように頼むから」



芙美子おばさんねぇ……

兄貴の結婚で弾みがついたのか 最近はお見合い紹介業に忙しそうだと

聞いている

”はいはい”と 適当に答えておく


和史と結婚か……

想像がつかないというか 現実味がないというか ピンとこないわね

なんとなく付き合って そのままゴールインなんてイヤだな

今まで 苦しいほど人を好きになったこともない

私自身 どこか冷めた目で男性を見てきたのも原因かな

狂おしい恋なんて きっと私には縁がないのかも

そんな恋をする勇気もないクセに ちょっと残念な気がした





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