結婚白書Ⅲ 【風花】



毎年 各都道府県で持ち回りで行われる全国会議がある

来年はウチの県の当番になっていた

全国から集まり 出席者数百人規模の会議が行われる

二泊三日の日程で その人数を宿泊させるため 観光協会や商工会を

巻き込んでの大がかりな会議だ

そのため 一年以上前から企画し 準備に追われる

今年の開催県へは視察を兼ね いつもの倍の人数の出張が組まれた

私の課からは 課長補佐と私が出席することになった


今年は静岡か……空港は中部より羽田が近いわね

そうだ 足を伸ばして兄貴のところに寄ってみようかな


その夜 久しぶりに兄貴の家に電話をした



「もしもし 和音さん? 朋代です」



電話の向こうで 大輝の元気な泣き声が聞こえる



「いま大丈夫?」


「いいのよ 子どもは泣くのも仕事 高志さんもいるから心配しないで」



和音さんの落ち着いた声 子どもの泣き声に慌てる様子もない


来月の出張の事を告げると 「ぜひ泊まりに来て」 と快い返事だった


兄貴も 「大輝 大きくなったぞー 見に来いよ」 と勧めてくれた



「和音も大輝の相手ばかりだから お前が来ると喜ぶよ」



ふぅ~ん 妹より奥さんの心配なのね

兄貴が和音さんにぞっこんなのは 今に始まった事ではないが

夫婦仲の良さを見せつけられたみたいで 妹としてはちょっと妬けた





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