詩集 詩悪魔 ―Daimon Poiesis―
先天性



『先天性』


かの女性に胚胎された
愛しい受精卵が
ディアボロスの祝福を受けた

それが僕だった

どれだけの禊と
どれだけの懺悔
繰り返しても何も変わりはしない
そうだそのとおりだ
生まれる前に刻印されたのだ
拭いても拭いても滴り落ちる暗闇は
僕が生み出していた
白くて甘いDNAで合成される
誘惑のためだけに作られた薬物
凍りつくようだ
君に触れたいのに
君が堕ちてしまうんだ

震えるほどの悔恨に身をさらし
溢れる毒液を自分で飲む
耐えて
耐え切れなくて
神につながれて飼われることを
心から願った
それがどうだ
犬のように飼い馴らされたところで
僕の使命はメシアでも何でもない
言われたのはたったひとこと

“行ってお前の為すべき事を為せ”

ああ…この言葉を最初に
誰に言ったのか僕は知っている
その者に抱いた軽蔑と同情
それを今日自分に捧げるのだ

赦されてるのかな
赦されていない…のかな
ちょん切られた首吊り縄が
柏木の下で風に吹かれている
自死はない
明るい闇路を僕はひとり往く
僕に愛はない
だけど愛されてる
それだけはわかってる
赦さないのは自分だ
赦されてることの過酷さから
逃げ出したい
それだけなんだ










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