恋とくまとばんそうこう
……
『まぁ、気にしないこった。後ろの席には誰も座ってねぇーって勢いで存在自体スルーしとけば?』
そんな工藤のアドバイスを胸に、俊は今日も登校する。
気にしない、気にしない。
そんな呪文を何度となく心の中で呟いた。
なのに、効くどころか神経が全部背中にあるように彼女の一挙一足を身体が広い集める。
…くそっ
自分に苛々して仕方なかった。
気にしなければいいのに。
本当に、その通りなのに。
なんでそんな簡単なことが出来ないのだろう。
…
「(…なんか一人だけズレてる奴がいる。)」
ふわりと聞こえてくる柔らかな音色に、俊は顔を上げずに耳をすます。
泥に少し汚れたボールをパシッと小気味良くキャッチしながら、首を傾げた。
コーラス部の歌は、軟式にとって最早ただ聴き流すBGMだ。
普段は気にしないが、日曜日などで歌が聞こえてこないと少し違和感を感じる。
あっても気にならないが、ないと気になる家族のような存在だった。
その歌に、昨日なかったものが混じっている。
可愛らしい声、だけど自信なさげにフラフラした音。
「こら滝井ぃ…っ!ぼんやりすんな!」
「すぃあせん!!」
ドゴンっ、と重たい玉を滑り込みながら取って、俊は声を張り上げた。