恋とくまとばんそうこう



久しぶりに空を見つめてボケーッとする。

いつもいつもボールを追いかけているからつい忘れてしまうが、俊の頭上にはいつでもこんなにデカい空が広がっているのだ。

…はぁ。

空に逃がす、ため息。

あの、地味に衝撃的だった一件で、俊はまざまざと思い知らされたのだ。

変わらないと思っていた、彼女との関係。


…変わっていないと思っていた。

彼女が歌って、俊が聞く。

グラウンドで、野球をしながら。

クラスが変わっても、これだけは。

これだけは変わらないと。


でも、違うかもしれない。

変わるかもしれない。

彼女が明日から急に気が変わって歌わなくなるかもしれない。

急に気が変わって…、


あの爆弾が根本から無くなるかもしれない。


俊は後悔した。


なんで、なんでなんで。

いくらでも、いくらでもあったじゃないか。

なんで、自分から動かなかったんだ。

なんで。

もう、既にクラスは離れてしまった。

彼女から直接聞いたわけではない。

俊のどこが気に入ったのかまったく分からない。

本気じゃないかもしれない。


…そんな事はどうでも良かったのだと今、俊は知る。

赤くなる前の空をもう一度見上げた。


彼女がどうのこうのじゃない。


自分が、

彼女の事を好きだったのだ。




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