恋とくまとばんそうこう



ガウゥンンン…と脳に衝撃の波紋が広がる。

笑ったのだ。

千葉が。

…知らない男に。

それは、殺傷能力抜群の斬れ味だった。

クラスの前の廊下で、俊は見てしまった。

特に仲のいい様子には見えなかったが、二言三言話して、ふっと彼女が笑ったのだ。

遠慮がちに、控えめに。

でも、思わず笑ってしまったと、あの白い手を添えて彼女は知らない男に笑うのだ。

眉を垂らして、目を少し細めて。

あんな顔…見たことない。

悔しいのか悲しいのか衝撃を受けたのか落ち込んだのか、はたまたそれ全部か。

そんなどうしようもない感情を背おって、俊は廊下を歩く。

彼女の方は…見なかった。

ひたすら心臓が痛かった。

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