恋とくまとばんそうこう



誰なんだ誰なんだと代わる代わる周りから質問されるが俊はまたあのポーカーフェイスに少し微笑みを乗せてのらりくらりと答えることはなかった。

噂がどこまで広がったのか知らないが、放課後に会った松浦がなにも言わずにニヤリと笑ったので、だいぶ広がっていったんだなぁと他人事のように俊は思う。


「よぅ、昨日、逃げられたんだろ。」


いわんこっちゃないと松浦がシャツを脱いでたくましい背中を晒しながら笑った。

「大丈夫。また行くから。」


本気で、捕まえに。


そんなブレない俊に、松浦は珍しく苦笑いする。

「…お前、いったん腹据えると怖いもん無しだからな。」

コレ、男前に見えるぜ。

そう言って絆創膏をペチッと軽く突き、着替え終わった松浦は一足先にグラウンドに向かった。


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