恋とくまとばんそうこう
少しそっちの覚悟もしていたけど、教室でざわつかれた。
不思議と遠目に好奇な目で見られるだけで、誰も突っかかってこない。
俊はいつも通りの顔をして授業を受けた。
昼休み、とうとう好奇心に負けたのかクラスの友人が俊の頬を指さす。
「…あのさ、どーしたそれ。」
「怪我した。」
「じ、自分で貼ったのか?」
恐る恐る尋ねる友人のおっかなびっくりな顔と、心配のベクトルが思っていたのと少し違って、俊はちょっと笑ってしまった。
俊がこの柄をセレクトしたと思っていたのか。
「まさか。」
そういって俊はパンをかじる。
「え…じゃあ誰がそんなクマちゃん貼ったんだよ?」
ごく当たり前の質問に、俊は少し考えた後、普通の口調で答えた。
「俺の好きな女の子。」
「え。」
ぇえええーーーーっ!!?
…その後、水辺の波紋が広がっていくような驚きの渦に、俊は素知らぬ顔でただパンを食べ続けた。