Treasure in Paradise【Brack☆Jack2】

【3】

【3】






 老人が最後にこの店に顔を出したのは、夏の暑い日のことだった。


「おつりは今度来たときにまわして!!」

「……はいよ」


 ミサトが何故か慌てて店を出て行った直後、老人が入り口から顔をのぞかせた。


「いらっしゃい」


 店主はかわりなく挨拶をする。


「今のは…」


 店の中に入り、カウンターに座りながら、老人は店主に尋ねた。


「あの子ですよ。今しがた店を覗いた男を追い掛けて出ていきましたがね」


 キープしてある老酒(ラオチュー)のボトルとグラスとを老人の前に置きながら、店主は言った。

 老人は少しだけ考 えを巡らせたが、すぐにグラスに酒を注ぐ。

 賑わっていた店も、夜が更けるにつれてだんだんと静かになってきた。

 店の客が帰り、店主は暖簾を店の中にしまう。

 それまで何も話さなかった老人は、初めて口を開いた。
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