Treasure in Paradise【Brack☆Jack2】
「…今日は特に、暑かったなァ…」

「…あんたも余程暇なんだな。仕事、忙しいんじゃなかったのか?」


 カウンターの老人の横に座り、店主は聞いた。

 もう店じまいだからなのか、お客さんがいた時と違い、少し砕けた口調になっている。


「…所詮、隠居暮らしの暇なジジイじゃよ、わしは」

「まだ隠居してないだろ。ま、似たようなものだがね」


 そう言ってから、店主はグラスの焼酎を一口飲んだ。

 そして、老人の顔をまじまじと見つめ。


「あんまりあの子の前に姿を見せるのも、どうかと思うぜ?」


 だが老人は、大して悪びれてもいないようだった。


「…なんとなく、な。心配なんじゃよ」

「駒に肩入れはしない。あんたの主義じゃなかったかね?」


 そう言って笑う店主の言葉には、少しばかりからかうニュアンスが含まれていた。
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