オレンジジュース~俺と一人の生徒~
俺は回りに誰もいないことを確認し、トイレの中で立っている直の手を握った。
「大丈夫か?緊張してんのか?俺、ついててやろうか?」
その時、背後に人の気配を感じたが、俺は手を離すことが出来なかった。
後ろを振り向くと、キャビンアテンダントのお姉さんがにっこりと微笑んでいた。
まぁ、いい。
俺は、微笑み返し、人差し指を立てた。
「はい、かしこまりました。」
お姉さんは、そう言って、その場を去った。
俺の『内緒にしてね』ってメッセージをちゃんと受け取ってくれたようだ。
うつむいたままの直はそんなことも知らずに、俺の手を握り返してくれた。
「大丈夫・・・先生の顔見たら落ち着いたよ。」
「無理すんなよ。後ろから見てるから、何かあったら手をあげろ!」
俺は、直のおでこに手を当てた。
「ふふふふ、先生優しいね。大丈夫だよ。」
「良かった。次に飛行機に乗るのは・・・新婚旅行だな。その時は、俺がしっかり手を握っててやるからな。」