オレンジジュース~俺と一人の生徒~
リフトから降りると、俺は猛スピードでゲレンデを滑り下りた。
こんなにスピードを出すのは、学生時代以来だった。
直が落ちた場所は、急な斜面になっていた。
「おい!!直!!!」
俺は姿の見えない直を何度も呼んだ。
直にもしものことがあったら…俺、どうしたらいいか。
直、どうか無事でいてくれ。
「直!!」
真っ白な雪の中に、うずくまる直を見つけた。
直の背中には、さっき降り出した雪が積もっていた。
直から離れた場所に、ストックが2本落ちていた。
「直、大丈夫か…!!」
振り向いた直が、薄っすらと笑みを浮かべた。
俺はその場所がみんなから見えない場所じゃなかったとしても、直を抱きしめてしまっただろう。
俺は震えながら微笑む直を力いっぱい抱きしめた。
「もう大丈夫だ。もう怖くないよ。」
俺が抱きしめると、直はただ「先生」って何度も呼んだ。
「直…」
安心して、俺は空を見上げた。
真っ青な空に雲が浮かんでいた。