オレンジジュース~俺と一人の生徒~
階段の前の自動販売機でお茶を買った。
ペットボトルが落ちる音と同時にくしゃみが聞こえた。
俺は階段の手すりから、下の階を覗いた。
直…
そこには、俺が今会いたくて仕方がない人がいた。
そして、その人もまた俺に会いたくて仕方がなかった。
俺は、頭に巻いていたタオルを落とす。
階段にしゃがみ込んだ直が、不思議そうに上を見上げた。
「あ…」
「よ!!」
俺はさっき直にあげることができなかった「笑顔」を直にあげた。
上を見上げたまま、直は言った。
「先生、これちょうだい…」
いいよ、いくらでもやるよ。
お前が欲しいものは何でもやるよ。
「変態…」
俺は照れ隠しにそんなことを言って、階段を下りた。
直があまりにもキラキラした瞳で俺を見つめるから、俺は泣きそうになった。
ここが修学旅行の旅館だってこと、忘れそうになった。
自分が教師だってことも…頭から抜けそうになった。