オレンジジュース~俺と一人の生徒~
俺はまた不安の波に襲われた。
ガーリックの匂いのする美味しそうなパスタが運ばれてきた。
「わ~!おいしそう!!」
また笑顔に戻った直が、パスタを頬張る。
気のせいか・・・
直は、時々夜景に視線を移し、色っぽい表情になった。
直も大人になったな。
「綺麗だね・・・せんせ・・・」
俺は直の横顔に見とれていた。
普段学校で見せる表情とは別人のようだった。
少し潤んだ瞳が、高校生とは思えなかった。
「直の方が綺麗だけどな。」
直は、恥ずかしそうに笑いながら、メインの料理を食べ始めた。
「なぁ、いつか北海道に行きたいな。」
「この前話してくれた先生の親友の人の牧場、どんな所だろうね~!!」
直は、子羊のステーキを小さく切って口に入れた。
ピアノの生演奏が止まると同時に、店内の照明がもっと暗くなった。
「そうだな。お前にも会わせたいよ。また行きたいな、俺と直の思い出の北海道に・・・」
北海道は、今回の修学旅行が初めてではなかった。
でも、俺にとって北海道は・・・直との思い出の場所になった。
「修学旅行の最後の夜、お前に会えると思ってなかったよ。」
「私、ちょっとだけ探したんだけどあきらめて眠ってたんだぁ。ゆかりのおかげだね。」
思い出すと、胸が苦しくなるくらい・・・切ない思い出。
直のことがこんなにも大事なんだって感じた旅行だった。